古事記 序文(前編)

古事記
  • 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
  • 旧字体・古語は現代語になおします。

序文前編の解説

序文の序のところ。

8世紀当時の日本人の宇宙観や世界観が冒頭で描かれています。とはいっても、たった2行ですけどね。でも、この2行がスゴイと個人的に魅了されています。

古事記の序文の「混元こんげんすでりて、気象きしょういまあらわれず。わざし。だれかたちらむ。」という始まりが個人的な話ですが、神道の世界に入ったばかりのころ、とても好きでした。

現代的にいえば「宇宙の始まりなんて、誰にもわかりません。」って言いきっていて、嘘がなくて気持ちがいいです。天地が分かれたのも造化三神と総称される三つの神様の働きとして表現されていて、「日本人的だな」って思いました。

それでは、序文をはじめてみましょう。

序文(前編) 現代文訳

臣下の安万侶が申し上げます。
宇宙の始まりは混沌としていて、ハッキリとしていませんでした。そこに世界を成す根元が固まってきたのですが、まだまだ名づけようもない状態でした。しかし天と地が別れるとアメノミナカヌシ神・タカミムスビ神・カミムスビ神が産まれて世界が始まりました。次に陰と陽が別れるとイザナギ・イザナミが産まれて万物を生みだす祖神となりました。
イザナギは黄泉よみの国(死者の国)へ訪れて帰ってくると、そのケガレを落とすためにみそぎをしました。 目を洗うと日と月の神が産まれ、海水に浮き沈みして洗うと多くの神が産まれました。
天の岩戸の神事でさかきに鏡をかけたり、スサノオが誓約うけいで玉を砕いて神を生んだりして、代々天皇が続くことになります。またアマテラスが誓約うけいで剣を砕いて、スサノオが地上に降りてヤマタノオロチを退治して以降は多くの神々が繁栄した。
天安河あめのやすかわで神々が相談してタケミカヅチ神が伊那佐いなさ小浜おばまに降り経ってオオクニヌシから国譲りをうけて葦原中国あしはらのなかつくに(日本)を平定した。
ホノニニギ命は高千穂に降臨し、神武じんむ天皇は大和に入りました。
山から現れた熊の神にてこずりましたが天津神あまつかみが降ろした霊剣を高倉たかくらじが奉じてなんとか突破しました。ある時は尾がある人に出会いヤタガラスに導かれて吉野に入りました。忍坂おさかでは歌を合図にヤソタケルを討ち、一族を従わせました。崇神すじん天皇は天神地祇てんしんちぎを崇敬したので賢君と称えられました。仁徳にんとく天皇は民家の煮炊きの煙を見て人民を慈しんだ聖帝といわれています。成務せいむ天皇は国堺を定めました。允恭いんぎょう天皇は氏姓を制定しました。
歴代天皇の政治にはそれぞれに違いがあり、派手なものや地味なものもありますが、風教道徳の衰えを正し、現在に照らして参考にすることができるだろう。

序文(前編) 原文

しん安万侶やすまろもうさく、混元こんげんすでりて、気象きしょういまあらわれず。わざし。だれかたちらむ。しかれども乾坤けんこんはじめてわかるるとき、参神さんじん造化ぞうかはじめり、陰陽いんようここひらけて、二霊にれい群品ぐんぴんれり。所以このゆえ幽顕ゆうけん出入しゅつにゅうりして、日月じつげつあらうにあらわれ、海水かいすい浮沈ふちんして、神祗じんぎそそぐにあらわる。かれ太素たいそ杳冥えうめいなれども、本教ほんきょうりてくにはらしまみし時をり、元始げんし綿邈めんばくなれども、先聖せんせいりて、かみひとてたまいしあきらかにす。まことる、かがみけ、たまきて、百王ひゃくおう相續あいつぎ、つるぎくらおろちりて、萬神ばんしん蕃息はんそくせることを。安河やすのかわはかりて天下てんかたいらげ、小濱おばまあげつらいて国土こくどきよめき。ここ番仁岐命ほのににぎのみことはじめて高千嶺たかちほのたけくだりたまい、神倭かむやまと天皇すめらみこと秋津嶋あきつしま經歴けいれきしたまう。化熊かゆうやまで、天剣てんけん高倉たかくらじ生尾せいびみちさえぎり、大烏たいう吉野よしのみちびく。まいつらねてぞくはらひ、うたきてあだふくす。すなわゆめさとりて神祇じんぎうやまいたまう。所以このゆえ賢后けんこうしょうし、けむりのぞみて黎元れいげんでたまう、いま聖帝せいていつたう。さかいさだめてくにひらきて、近淡海ちかつあわみせいしたまい、かばねただうじえらびて、遠飛鳥とおつあすかろくしたまう。歩驟ほしゅうおのおのことに、文質ぶんしつおなじからずといえども、いにしえかんがえて風猷ふうゆうすですたれたるにただし。いまらしてもって典教てんきょうえんとほっするにおぎなはずということし。

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