
古事記 上巻 終
山幸彦は、そもそも兄・海幸彦の釣り針を探しに来たということを思い出し、未だ見つからないことに大きなため息をしました。元気のない様子を見ていた妻のトヨタマヒメが、大きなため息を聞いて心配になり、父・ワタツミ神に相談します。
「夫は、この生活を三年過ごしましたが、今までため息などしていませんでした。でも、今夜大きな溜息をしました。もしかして何か理由があるのでしょうか?」娘が不安になっていることを不憫に思い、婿の山幸彦を呼び寄せて話をし始めました。
「急に来てもらってすまんな。先ほど、娘から『三年いてもため息することもなかったのに、今夜大きな溜息をしました』と相談されたんだが、何か訳でもあるのではないか? そもそも、ここ(海の宮)に来た理由を教えてくまいか?」