古事記 上巻14

古事記
  • 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
  • 旧字体・古語は現代語になおします。
  • 神様は「柱」という数え方にします。
  • 大国主大神には五つの名がありますが、全て「ダイコク様」とします。

天孫の降臨

国つ神たちとの交渉を終え、再びアマテラスとタカギ神(=タカミムスビ)は、息子のアメノオシホミミ神(太子正勝吾勝勝速日天忍穂耳命)に命を与えました。「今、葦原中国(日本のこと)を平定したと報告がありました。以前にも命じたとおりに、地上に降りて国を統治しなさい」と言いました。

ところが、アメノオシホミミ命は、以前とは事情が変わってしまったことを告げます。「私は、いつでも地上に降りられるよう支度を整えていたのですが、下命を待っている間に子供(アマテラスの孫=天孫)が生まれてしましました。名前は、ホノニニギ命(天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命)と申します。私ではなく、この子を地上に使わすと良いでしょう。」

このホノニニギ命は、アメノオシホミミ命がヨロヅハタトヨアキツシヒメ命(万幡豊秋津師比売命=タカギ神の娘)と結ばれて生まれたのが
はじめに、アメノホアカリ命(天火明命)。
次に、ヒコホノニニギ命(日子番能邇邇芸命)。

アメノオシホミミの提案が、もっともだということになり、気を取り直してホノニニギ命に改めて命を与えました。

「この豊葦原水穂国(日本のこと)は、あなたが統治するべき国です。命に従い、地上に降り立ちなさい。」

命を受けたホノニニギ命が、地上に降臨しようと天の八衢(道の辻のこと)にさしかかると、上は高天原、下は葦原中国を照らす神がいました。

あやしく思った、アマテラスとタカギ神はアメノウズメ(天宇受売神)に命じました。
「あなたは、か弱い女性ではあるが、誰と向かい合っても気後れしない女神です。そこで、いま光っている神のところへ行って『吾が御子(=ニニギ)が天から降臨する道にいるのは誰だ?』と聞いてきなさい。」

アメノウズメは命じられたとおりに行き、光っている神に問いました。
「私は、国つ神のサルタヒコ(猿田毘古神)です。ここにいるのは、天つ神の皇子が地上へ降臨すると聞きまして、道中を先導しようとお迎えに来たのです。」

陪臣神の選出

天つ神たちは、怪しく光っていたのは、国つ神たちからの先導役ということに安心しました。

そして、地上に降臨するための陪臣として、5柱の神を選出し、ホノニニギ命に従わせて、天降りさせました。

その5柱の神とは、

アメノコヤネ命(天児屋命)

フトダマ命(布刀玉命)

アメノウズメ命(天宇受売命)

イシコリドメ命(伊斯許理度売命)

タマノオヤ命(玉祖命)

さらに、アマテラスを天岩戸から誘い出した八尺やさか勾玉まがだま・鏡・草那芸剣くさなぎのつるぎを授け、それにオモイカネ神(常世思兼神)、タヂカラオ(手力男神)、アメノイワトワケ神(天石門別神)も加えました。

アマテラスが注意深く言いました。
「この鏡は、ひたすら私の魂として私を拝むように祀りなさい。そしてオモイカネ神は、祭祀を執り行い、政治を行いなさい」

このアマテラスは、現在の五十鈴宮(伊勢の神宮)に丁寧に祀ってあります。

次にトヨウケ神(登由宇気神)。これは伊勢神宮の外宮の度相わたらい(=地名)に祭ってあります。

陪臣神の系譜

次にアメノイワトワケ神(天石戸別神)
別名を櫛石窓神(クシイワマドノカミ)
別名を豊石窓神(トヨイワマドノカミ)といいます。
この神は宮廷の門を守る神です。

次にタヂカラオ神は、佐那さな神社に祭られています。

アメノコヤネは中臣連の祖神です。
フトダマノは忌部首の祖神です。
アメノウズメは猿女君の祖神です。
イシコリドメは作鏡連(カガミツクリノムラジ)の祖神です。
タマノオヤは玉祖連(タマノオヤムラジ)の祖神です。

ここまでの原文

ここ天照大御神あまてらすおおみかみ高木神たかぎのかみ命以みこともちて、太子ひつぎのみこ正勝吾勝勝速日天忍穂耳命まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみことりたまはく、いま葦原中国あしはらのなかつくにことむへぬとまをす。言依ことよさしたまへりしまにまに、くだして知看しろしめせ。とのりたまひき。

ここ太子ひつぎのみこ正勝吾勝勝速日天忍穂耳命まさかあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと答白まをしたまはく、くだりなむ装束よそひせしほどに、みこれましつ。みな天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命あめにぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみことぞ。みこくだすべし。とまをしたまひき。

御子みこは、高木神たかぎのかみむすめ万幡豊秋津師比売命よろずはたとよあきつしひのみこと御合みあひまして、みませるみこ天火明命あめのほのあかりのみことつぎ日子番能邇邇芸命ひこほのににぎのみことにます。【二柱ふたはしらここちてまをしたまふまにまに、日子番能邇邇芸命ひこほのににぎのみこと詔科おほせて、豊葦原水穂国とよあしはらのみずほのくには、みまししらさむくになり、と言依ことよさしたまふ。みことまにま天降あもりますべし。とのりたまひき。

ここ日子番能邇邇芸命ひこほのににぎのみこと天降あもりまさむとするときに、天之八衢あめのやちまたて、かみ高天原たかまのはらてらし、しも葦原中国あしはらのなかつくにてらかみここり。ここ天照大御神あまてらすおおみかみ高木神たかぎのかみ命以みこともちて、天宇受売神あめのうづめのかみに、いまし手弱女人たわやめなれども、いむかふかみ面勝おもかかみなり。もはいましきてはむは、「御子みこ天降あもりまさむとみちを、たれ如此る。」とへ。とりたまひき。はせたまときに答へまをしけらく、国神くにつかみ猿田毘古神さるたびこのかみなり。所以ゆえは、天神あまつかみ御子みこ天降あもすときつるゆえに、御前みさきつかまつらむとして、参向まいむかさもらふぞ。とまをしたまひき。

ここ天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとたまのみこと天宇受売神あめのうづめのかみ伊斯許理度売命いしこりどめのみこと玉祖命たまのやのみことあわせて五伴緒いつとものをくまかわへて、天降あもりまさしめたまひき。

ここのをきし八尺勾瓊やさかのまがたまかがみ、及草那芸剣くさなぎのつるぎ、亦常世思兼神とこよのおもいかねのかみ手力男神たぢからをのかみ天石門別神あめのいはとわけのかみたまひて、りたまへらくは、れのかがみは、もは御魂みたまて、みまえいつくがごといつきまつれ。つぎ思兼神おもいかねのかみみまえことちて、まつりごとよ。とのりたまひき。

二柱ふたはしらかみは、佐久久斯侶伊須受能宮さくくしろいすずのみやいつきまつる。つぎ登由宇気神とようけのかみ外宮とつみや度相わたらいかみなり。

つぎ天石門別神あめのいはとわけのかみまた櫛石窓神くしいわまどのかみまをし、また豊石窓神とよいしまどのかみまをす。かみ御門みかどかみなり。つぎ手力男神たぢからをのかみ佐那県さながたせり。

天児屋命あめのこやねのみことは、中臣連等なかとみのむらじらおや布刀玉命ふとたまのみことは、忌部首等いむべのおびとらおや天宇受売神あめのうづめのかみは、猿女君等さるめのきみらおや伊斯許理度売命いしこりどめのみことは、鏡作連等かがみつくりのむらじらおや玉祖命たまのやのみことは、玉祖連等たまのやのむらじらおやなり。

コメント

Copied title and URL