古事記 上巻11

古事記
  • 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
  • 旧字体・古語は現代語になおします。
  • 神様は「柱」という数え方にします。
  • 大国主大神には五つの名がありますが、全て「ダイコク様」とします。

ダイコク様とスクナヒコナ

ダイコク様は出雲の美保岬(島根県松江市)にいた時のことでした。

ガガイモの実で出来た小さな船が、上手に波を乗りながら向かってきました。よく見ると、その船に乗っているのは、蛾の皮で作った服を着ている小さな神がいました。

突然やってきたその小さな神に、何度も名前を尋ねましたが答えませんでした。

そこで周りにいる諸々の神に知っているか聞きますが、誰も知りませんでした。

これには困ってしまい、ためしにヒキガエル(多邇具久たにぐく)に聞くと、「これは案山子かかしのクエビコ(久延毘古くえびこ)が知っているでしょう」と言いました。

すぐに案山子かかしのクエビコを呼んで聞いてみると「これはカミムスビカミの子供、スクナヒコナ神(少名毘古那神)です。」と答えました。


ダイコク様は、カミムスビ神に御子のスクナヒコナが出雲に来たことを報告すると、「なるほど、確かにわたしの子だ。子供の中で特に小さかったので、私の指の間から漏れこぼれた子だ。お前たち二人は兄弟となってその国を作り固めなさい」と、カミムスビ神は言いました。

それから、ダイコク様とスクナヒコナの二柱の神は協力して、この国を作りました。その後、スクナヒコナは、常世国とこよのくにへと渡りました。

スクナヒコナ神を知っていたクエビコは、現在、山田の曽富騰そほどといいます。この神は、足で歩くことが出来ませんが、世界のことをよく知っている神です。

スクナヒコナと国造り

ダイコク様がカミムスビ神にスクナヒコナのことを報告すると、
「これは本当に、わたしの子だ。子供の中で特に小さく、私の指の間から漏れこぼれた子だ。
お前はアシハラシコオ(ダイコク様のこと)と兄弟となってその国を作り固めなさい」
と言いました。

それから、ダイコク様とスクナヒコナは協力して、この国を作りました。その後、スクナヒコナは常世国とこよのくにへと渡りました。

スクナヒコナを知っていたクエビコは、現在、山田のソホドといいます。この神は足で歩くことが出来ませんが、世界のことを知っている神です。

ダイコク様は、不安になって言いました。「わたしは一人でどうやってこの国を作ったらいいのだろう。どこかの神が私と、この国を作ってくれないだろうか!」

ダイコク様が落ち込んでいると、海を光ってやってくる神が居ました。その神が言うには

「私を丁寧に祀るのであれば、わたしはあなたと共に、国を作ろう。もし祀らなければ国造りは困難になるだろう。」

「ならばあなたの魂を治め祀るにはどうしたらよいですか?」

「私の魂をやまとを取り囲んでいる山々の、その東の山に丁寧に祀れ」と答えました。

この神は御諸山にいる神です。

大年神の系譜

オオトシ神(大年神)が、カミイクスビ神(神活須毘神)の娘のイノヒメ(伊怒比売)を娶って産んだ子はオオクニミタマ神(大国御魂神)。
次にカラ神(韓神)。次にソホリ神(曽富理神)。次にシラヒ神(白日神)。次にヒジリ神(聖神)。

オオトシ神がカヨヒメ(香用比売)を娶った産んだ子は、オオカグヤマトミ神(大香山戸臣神)。次にオトシ神(御年神)です。

オオトシ神がアメチカルミズヒメ(天知迦流美豆比売)を娶った生んだ子が、オキツヒコ神(奥津日子神)。次にオキツヒメ(奥津比売命)、別名がオオヘヒメ神(大戸比売神)。これは人々が祀っている「竃(カマド)」の神です。

オオトシ神がアメチカルミズヒメを妻として生んだカマドの神たちの次に生まれたのが、オオヤマクイ神(大山咋神)。別名をヤマスエノオオヌシ神(山末之大主神)。この神は近江の日枝の山(=比叡山)に鎮座し、また、葛野の松尾に鎮座し鳴鏑を神体とする神です。

次は、ニワツヒコ神(庭津日神)。
次に、アスハ神(阿須波神)。
次に、ハヒキ神(波比岐神)。
次に、カグヤマトミ神(香山戸臣神)。
次に、ハヤマト神(羽山戸神)。
次に、ニワタカツヒコ神(庭高津日神)。
次に、オオツチ神(大土神)。別名をツチノミオヤ神(土之御祖神)。
以上、9柱です。

これまでのオオトシ神の子である、オオクニミタマからオオツチ神まではあわせて16柱。

ハヤマト神(羽山戸神)がオオゲツヒメ神(大気都比売神)を娶って生んだ子が、ワカヤマクイ神(若山咋神)。
次に、ワカトシ神(若年神)。
次に、イモワカサナメ神(妹若沙那売神)。
次に、ミズマキ神(彌豆麻岐神)。
次に、ナツタカツヒ神(夏高津日神)。別名をナツノメ神(夏之売神)。
次に、アキヒメ神(秋毘売神)。
次に、ククトシ神(久々年神)。
次に、ククキワカムロツナネ神(久々紀若室葛根神)。

これまでのハヤマト神の子は、ワカムロツナネまではあわせて8柱です。

ここまでの原文

大国主神おおくにぬしのかみ出雲いづも御大之御前みほのみさきときに、なみより、天之羅摩船あめのかがみのふねりて、おおかりかわ内剥うつはぎぎて衣服きものて、かみり。はすれどもこたへず。また所従みとも諸神かみたちはすれども、みならず。」とまうしき。

ここ多邇具久たにぐく白言まおしけらく、「久延毘古くえびこかならりつらむ。」とまをせば、すなわ久延毘古くえびこしてはすときに、「神産巣日神かみむすびのかみ御子みこ少名毘古那神すくなびこなのかみぞ。」とこたまおしき。

ここ神産巣日御祖命かみむすびみおやのみこともうげしかば、「まことみこなり。みこなかに、手俣たなまたよりくきしみこなり。いまし葦原色許男命あしはらのしこおのみこと兄弟あにおとりて、くにつくかためよ。」とのりたまひき

それより大穴牟遅おおなむぢ少名毘古那すくなひこな二柱ふたはしら神相並かみあいならばして、くにつくかためたまひき。のちは、少名毘古那神すくなびこなのかみは、常世国とこよのくにわたりましき。

少名毘古那神すくなびこなのかみあらはしもうせしいわはゆる久延毘古くえびこは、いま山田之曽富騰やまだのそほどといふものなり。かみは、あしあるかねども天下あめのしたことれるかみになもありける。

ここ神産巣日御祖命かみむすびみおやのみこともうげたまへば、まことみこなり。みこなかに、手俣たなまたよりくきしみこなり。みまし葦原色許男命あしはらのしこおのみこと兄弟あにおとりて、くにつくかためよと答告りたまひき。

それより大穴牟遅おおなむぢ少名毘古那すくなびこな二柱ふたはしらかみ相並あいならばして、くにつくかためたまひき。のちには、少名毘古那すくなびこなかみ常世国とこよのくにわたりましき。

少名毘古那すくなびこなかみあらわもうせりし所謂いわゆる久延毘古くえびこは、いま山田之曽富騰やまだのそほどといふものなり。かみは、あしあるかねども天下あめのしたの事をことごく知れるかみになもありける。

ここ大国主神おおくにぬしのかみうれひまして、あれひとりしていかでかもくに得作えつくらむ。いづれのかみとともにくに相作あいつくらましとりたまひき。

ときうなばらてらしてかみり。かみりたまはく、みまえおさめてば、共与ともども相作あいつくしてむ。しからずば国成くになてましとのりたまひき。

大国主神おおくにぬしのかみもおしたまはく、しからばおさまつらむさま奈何いかにぞとまをしたまへば、をばもやまと青垣あおがきひむがし山上やまのへにいつきまつれ、と答言りたまひき。御諸山みもろのやまかみなり。

大年神おおとしのかみ神活須毘神かむいくすびのかみむすめ伊怒比売いぬひめみあいてみませるみこ大国御魂神おおくにみたまのかみつぎ韓神からのかみつぎ曽富理神そほりのかみつぎ白日神しらひのかみつぎ聖神ひじりのかみ。【五神いつはしら
また香用比売かがよひめみあいてみませるみこ大香山戸臣神おおかがやまとおみのかみつぎ御年神みとしのかみ。【二柱ふたはしら

また天知迦流美豆比売あめしるかるみづひめみあいてみませるみこ奥津日子神おきつひこのかみつぎ奥津比売命おきつひめのみことまたみな大戸比売神おおべひめのかみ諸人もろびといつ竃神かまのかみなり。

つぎ大山咋神おおやまくいのかみまたみな山末之大主神やますえのおおぬしのかみかみ近淡海国ちかつおうみのくに日枝山ひえのやます。また葛野かづぬ松尾まつのおして、鳴鏑なりかぶらりませるかみなり。つぎ庭津日神にわつひのかみつぎ阿須波神あすはのかみつぎ波比岐神はいぎのかみつぎ香山戸臣神かがやまとおみのかみつぎ羽山戸神はやまとのかみつぎ庭高津日神にわたかつひのかみつぎ大土神おおつちのかみまたみな土之御祖神つちのみおやのかみ。【九神ここのはしら

かみくだり大年神おおとしのかみみこ大国御魂神おおくにみたまのかみより以下しも大土神おおつちのかみ以前まであわせて十六神とおあまりむはしら

羽山戸神はやまとのかみ大気都比売神おおげつひめのかみみあいてみませるみこ若山咋神わかやまくいのかみつぎ若年神わかとしのかみつぎいも若沙那売神わかさなめのかみつぎ彌豆麻岐神みづまきのかみつぎ夏高津日神なつたかつひのかみまたみな夏之売神なつのめのかみつぎ秋毘売神あきびめのかみつぎ久々年神くくとしのかみつぎ久々紀若室葛根神くくきわかむろつなねのかみ
 かみくだり羽山戸神はやまとのかみの子若山咋神わかやまくいのかみより以下しも若室葛根わかむろつなねのかみ以前まであわせて八神やはしら

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