- 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
- 旧字体・古語は現代語になおします。
- 神様は「柱」という数え方にします。
- 大国主大神には五つの名がありますが、全て「ダイコク様」とします。
ダイコク様とスクナヒコナ
ダイコク様は出雲の美保岬(島根県松江市)にいた時のことでした。
ガガイモの実で出来た小さな船が、上手に波を乗りながら向かってきました。よく見ると、その船に乗っているのは、蛾の皮で作った服を着ている小さな神がいました。
突然やってきたその小さな神に、何度も名前を尋ねましたが答えませんでした。
そこで周りにいる諸々の神に知っているか聞きますが、誰も知りませんでした。
これには困ってしまい、ためしにヒキガエル(多邇具久)に聞くと、「これは案山子のクエビコ(久延毘古)が知っているでしょう」と言いました。
すぐに案山子のクエビコを呼んで聞いてみると「これはカミムスビカミの子供、スクナヒコナ神(少名毘古那神)です。」と答えました。
ダイコク様は、カミムスビ神に御子のスクナヒコナが出雲に来たことを報告すると、「なるほど、確かにわたしの子だ。子供の中で特に小さかったので、私の指の間から漏れこぼれた子だ。お前たち二人は兄弟となってその国を作り固めなさい」と、カミムスビ神は言いました。
それから、ダイコク様とスクナヒコナの二柱の神は協力して、この国を作りました。その後、スクナヒコナは、常世国へと渡りました。
スクナヒコナ神を知っていたクエビコは、現在、山田の曽富騰といいます。この神は、足で歩くことが出来ませんが、世界のことをよく知っている神です。
スクナヒコナと国造り
ダイコク様がカミムスビ神にスクナヒコナのことを報告すると、
「これは本当に、わたしの子だ。子供の中で特に小さく、私の指の間から漏れこぼれた子だ。
お前はアシハラシコオ(ダイコク様のこと)と兄弟となってその国を作り固めなさい」
と言いました。
それから、ダイコク様とスクナヒコナは協力して、この国を作りました。その後、スクナヒコナは常世国へと渡りました。
スクナヒコナを知っていたクエビコは、現在、山田のソホドといいます。この神は足で歩くことが出来ませんが、世界のことを知っている神です。
ダイコク様は、不安になって言いました。「わたしは一人でどうやってこの国を作ったらいいのだろう。どこかの神が私と、この国を作ってくれないだろうか!」
ダイコク様が落ち込んでいると、海を光ってやってくる神が居ました。その神が言うには
「私を丁寧に祀るのであれば、わたしはあなたと共に、国を作ろう。もし祀らなければ国造りは困難になるだろう。」
「ならばあなたの魂を治め祀るにはどうしたらよいですか?」
「私の魂を倭を取り囲んでいる山々の、その東の山に丁寧に祀れ」と答えました。
この神は御諸山にいる神です。
大年神の系譜
オオトシ神(大年神)が、カミイクスビ神(神活須毘神)の娘のイノヒメ(伊怒比売)を娶って産んだ子はオオクニミタマ神(大国御魂神)。
次にカラ神(韓神)。次にソホリ神(曽富理神)。次にシラヒ神(白日神)。次にヒジリ神(聖神)。
オオトシ神がカヨヒメ(香用比売)を娶った産んだ子は、オオカグヤマトミ神(大香山戸臣神)。次にオトシ神(御年神)です。
オオトシ神がアメチカルミズヒメ(天知迦流美豆比売)を娶った生んだ子が、オキツヒコ神(奥津日子神)。次にオキツヒメ(奥津比売命)、別名がオオヘヒメ神(大戸比売神)。これは人々が祀っている「竃(カマド)」の神です。
オオトシ神がアメチカルミズヒメを妻として生んだカマドの神たちの次に生まれたのが、オオヤマクイ神(大山咋神)。別名をヤマスエノオオヌシ神(山末之大主神)。この神は近江の日枝の山(=比叡山)に鎮座し、また、葛野の松尾に鎮座し鳴鏑を神体とする神です。
次は、ニワツヒコ神(庭津日神)。
次に、アスハ神(阿須波神)。
次に、ハヒキ神(波比岐神)。
次に、カグヤマトミ神(香山戸臣神)。
次に、ハヤマト神(羽山戸神)。
次に、ニワタカツヒコ神(庭高津日神)。
次に、オオツチ神(大土神)。別名をツチノミオヤ神(土之御祖神)。
以上、9柱です。
これまでのオオトシ神の子である、オオクニミタマからオオツチ神まではあわせて16柱。
ハヤマト神(羽山戸神)がオオゲツヒメ神(大気都比売神)を娶って生んだ子が、ワカヤマクイ神(若山咋神)。
次に、ワカトシ神(若年神)。
次に、イモワカサナメ神(妹若沙那売神)。
次に、ミズマキ神(彌豆麻岐神)。
次に、ナツタカツヒ神(夏高津日神)。別名をナツノメ神(夏之売神)。
次に、アキヒメ神(秋毘売神)。
次に、ククトシ神(久々年神)。
次に、ククキワカムロツナネ神(久々紀若室葛根神)。
これまでのハヤマト神の子は、ワカムロツナネまではあわせて8柱です。
ここまでの原文
故れ大国主神、出雲の御大之御前に坐す時に、波の穂より、天之羅摩船に乗りて、鵞の皮を内剥に剥ぎて衣服に為て、帰り来る神有り。爾れ其の名を問はすれども答へず。且所従の諸神に問はすれども、皆「知らず。」と白しき。
爾に多邇具久白言しけらく、「此は久延毘古ぞ必ず知りつらむ。」とまをせば、即ち久延毘古を召して問はす時に、「此は神産巣日神の御子、少名毘古那神ぞ。」と答へ白しき。
故れ爾に神産巣日御祖命に白し上げしかば、「此は実に我が子なり。子の中に、我が手俣よりくきし子なり。故れ汝葦原色許男命と兄弟と為りて、其の国を作り堅めよ。」とのりたまひき
故れ爾より大穴牟遅と少名毘古那と二柱の神相並ばして、此の国を作り堅めたまひき。然て後は、其の少名毘古那神は、常世国に度りましき。
故れ其の少名毘古那神を顕はし白せし謂はゆる久延毘古は、今に山田之曽富騰といふ者なり。此の神は、足は行かねども天下の事を知れる神になもありける。
故れ爾に神産巣日御祖命に白し上げたまへば、此は実に我が子なり。子の中に、我が手俣よりくきし子なり。故れ汝葦原色許男命と兄弟と為りて、其の国を作り堅めよと答告りたまひき。
故れ爾より大穴牟遅と少名毘古那と二柱の神相並ばして、此の国を作り堅めたまひき。然て後には、其の少名毘古那神は常世国に度りましき。
故れ其の少名毘古那神を顕し白せりし所謂久延毘古は、今に山田之曽富騰といふ者なり。此の神は、足は行かねども天下の事を尽く知れる神になもありける。
是に大国主神、愁ひまして、吾独して何かも此の国を得作らむ。孰れの神とともに吾は能く此の国を相作らましと告りたまひき。
是の時に海を光して依り来る神有り。其の神の言りたまはく、我が前を能く治めてば、吾能く共与に相作り成してむ。若し然らずば国成り難てましとのりたまひき。
爾れ大国主神曰したまはく、然らば治め奉らむ状は奈何にぞとまをしたまへば、吾をばも倭の青垣、東の山上にいつき奉れ、と答言りたまひき。此は御諸山の上に坐す神なり。
故れ其の大年神、神活須毘神の女、伊怒比売を娶いて生みませる子、大国御魂神。次に韓神。次に曽富理神、次に白日神。次に聖神。【五神】
又、香用比売を娶いて生みませる子、大香山戸臣神。次に御年神。【二柱】
又、天知迦流美豆比売を娶いて生みませる子、奥津日子神。次に奥津比売命、亦の名は大戸比売神。此は諸人の以ち拝く竃神なり。
次に大山咋神、亦の名は山末之大主神。此の神は近淡海国の日枝山に坐す。亦葛野の松尾に坐して、鳴鏑に成りませる神なり。次に庭津日神。次に阿須波神。次に波比岐神。次に香山戸臣神。次に羽山戸神。次に庭高津日神。次に大土神。亦の名は土之御祖神。【九神】
上の件、大年神の子、大国御魂神より以下、大土神以前、并せて十六神。
羽山戸神、大気都比売神を娶いて生みませる子、若山咋神。次に若年神。次に妹若沙那売神。次に彌豆麻岐神。次に夏高津日神、亦の名は夏之売神。次に秋毘売神。次に久々年神。次に久々紀若室葛根神。
上の件、羽山戸神の子若山咋神より以下、若室葛根以前、并せて八神
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