- 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
- 旧字体・古語は現代語になおします。
- 神様は「柱」という数え方にします。
スサノオ、勝利宣言後に高天原で暴れる
スサノオが声高らかに言いました。
「わたしの心は清らかで正直だ。だから、か弱くやさしい女の子が生まれたのだ。 そう… つまり、わたしが誓約に勝ったということだ!」
そして、勝利に乗じてアマテラスが営む田んぼの畦を壊し、田に水を引く溝を埋めてしまい、神聖な儀式を行う神殿で排泄をしました。
こうしたスサノオの悪行を注意もせずに、アマテラスはスサノオのことをかばいます。
「あのウンコのように見えるのは、酔っぱらって吐いたゲロです。
そして田んぼの畦を壊したり溝を埋めたのは、土地を新しく広げるためでしょう」
と良い方に言い直しましたが、スサノオの悪行はさらに激しくなっていきました。
ある日、アマテラスは神聖な機織り小屋で神にささげる服を織らせていました。
スサノオは、その小屋の屋根をぶち破って、逆に皮を剥いだ馬を放り込みました。すると機織りをしていた女性が驚いて、女性器を機織りの部品で突いて死んでしまいました。
アマテラス、天の岩戸に閉じこもる
スサノオの悪行は、高天原としては受け入れがたい行為であり、統治者のアマテラスは何かしらの措置をとらなければなりません。しかし、弟の狂気じみた行動が恐ろしくなり、ついには天の岩戸の中に閉じ籠ってしまいました。
すると、高天原は暗闇に包まれ、不気味な雰囲気になりました。葦原中国(地上)も、同じように暗くなり、朝になっても日が昇らない永遠の夜となったのです。
そして、おびただしい邪神の声に満ち、夏の蝿のような気持ち悪い音が響き、数え切れないほどの災いが溢れかえりました。
こうした事態を収拾するために、八百万の神が天安河に集って、タカミムスビの神の子のオモイカネの神(思金神)を中心に対応策を考えさせました。
そうだ、お祭りをしよう!
「そうだ、こんな時にこそお祭りだ!」
すごーく考えこんでいたオモイカネは、みんなで一緒に盛大にお祭りを行うことをひらめきました。
そのお祭りの仕方というのが
まず長鳴鳥(ナガナキドリ)を集めて泣かせました。
次に天安河の上流の天の堅石と、天の金山の鉄を材料に、鍛冶屋のアマツマラ(天津麻羅)と鏡の神のイシコリドメの命(伊斯許理度売命)に鏡を作らせました。
また宝石の神のタマノオヤの命(玉祖命)に勾玉を連ねた装飾品を作らせました。
次にアメノコヤネの命(天児屋命)とフトダマの命(布刀玉命)を呼び、神聖な山に住んでいた鹿の骨を抜き取って、同じく神聖な山の桜の木で占いをさせました。
そして、神聖な山のサカキの木を一本抜いてきて、そのサカキの上に勾玉を連ねた装飾品を、中ごろに八咫鏡(ヤタノカガミ)を、下には白い布と青い布を垂らしました。
その飾ったサカキをフトダマ命が持ち、アメノコヤネ命が祝詞を唱えました。
いざという時ために、アメノタヂカラオの神(天手力男神)が岩戸のそばに隠れて立っています。
アメノウズメの命(天宇受売命)は、ヒカゲカズラをたすきがけにし、マサキカズラを髪に飾り、手には笹の葉を束ねて持って、桶を伏せてその上に立って踏みならしながら踊り始めました。
アメノウズメの熱狂的な踊りをするものですから、胸をはだけ、女性器をあらわにしました。これには、八百万の神もたまらず、どっと笑いがおきました。
光もどる
八百万の神々が大笑いしている声を聞いて、アマテラスは「おや?」と思いました。たまらなく気になって、石屋戸の戸を少しだけ開いて、中から覗いて聞いてみました。
「わたしがいなくなって困っているはずなのに、どうしてウズメは踊り、周りの神々は笑っているの?」と言いました。
するとアメノウズメは「あなたよりも優れた神がいらっしゃったので、嬉しくって踊っているのです」
と答えました。
ウズメが答えている間に、アメノコヤネとフトダマが鏡をアマテラスに指し出して見せると、アマテラスは不思議に思い、よく見ようと岩戸から覗きこみました。
そのときです。戸の陰に隠れていたタヂカラオが、アマテラスの手をつかんで引っぱって出しました。
そして、すぐにフトダマが注連縄をアマテラスの後方に掛けて
「これより中には入ることはできません」と言いました。
アマテラスが出てきたので高天原も地上にも自然と太陽の光が戻り、神々はホットしました。
八百万の神は話し合って、スサノオに沢山の品物を罰として納めさせ、髭を切り、手足の爪を抜いて、高天原から追放してしまった。
スサノオとオオゲツヒメ
高天原での行為を贖い、地上に追放され、くたくたになったスサノオは空腹をに悩まされいました。
「何か食べさせてください」とオオゲツヒメ(大気津比売神)という神に食事を求めました。
疲れはてた姿に同情し、快く受け入れて席に案内しました。
しかし、お腹を空かしたスサノオは、台所で料理のようすを見に行くと、なんとオオゲツヒメは鼻や口やお尻から食べ物を出し、調理していました。
それを見たスサノオは
「汚い食べ物を出しやがって!」と怒って、オオゲツヒメを殺してしまいました。
殺されたオオゲツヒメから生まれたものがありました。
頭からは蚕。
二つの目からは稲。
二つの耳からは粟。
鼻からは小豆、
陰部から麦。
お尻から大豆が産まれました。
カミムスビミオヤの神(神産巣日御祖命)はこれらを取り、種としました。
ここまでの原文
爾に速須佐之男命、天照大御神に白したまわく、我が心清明き故に、我が生めりし子は手弱女を得つ。此に因りて言さば、自ら我勝ちぬと云いて、勝さびに、天照大御神の営田の阿離ち、其の溝埋め、亦其の大嘗聞看す殿に屎まり散しき。
故れ然為れども、天照大御神はとがめずして告りたまわく、屎如すは酔ひて吐き散すとこそ、我が那勢之命如此為つらめ。又田の阿離ち溝埋むるは、地をあたらしとこそ、我が那勢之命如此為つらめ、詔り直したまへども、猶其の悪しき態止まずて転あり。
天照大御神忌服屋に坐しまして、神御衣織らしめたまう時、其の服屋の頂を穿ちて、天斑馬を逆剥ぎに剥ぎて、堕し入るる時に、天衣織女見驚きて、梭に陰上を衝きて死せにき。
故れ是に天照大御神見畏みて、天石屋戸を閇てて、さしこもりましましき。爾ち高天原皆暗く、葦原中国悉に闇し。此に因りて常夜往く。是に万の神の声は、狭蝿如す皆涌き、万の妖悉に発りき。
是を以て八百万神、天安之河原に神集い集いて、高御産巣日神の子思金神に思わしめて、常世の長鳴鳥を集えて鳴かしめて、天安河の河上の天堅石を取り、天金山の鉄を取りて、鍛人天津麻羅を求ぎて、伊斯許理度売命に科せて鏡を作らしめ、玉祖命に科せて八尺之勾瓊之五百津之御須麻流之珠を作らしめて、天児屋命、布刀玉命を召びて、天香山の真男鹿の肩を内抜きに抜きて、天香山の天波波迦を取りて、占合まかなわしめて、天香山の五百津真賢木を根こじにこじて、上枝に八尺之勾瓊之五百津之御須麻流之珠を取り著け、中枝に八尺鏡を取り繋け、下枝に白丹寸手、青丹寸手を取り垂でて、此の種種の物は、布刀玉命、布刀御幣と取り持たして、天児屋命、布刀詔刀言祷ぎ白して、天手力男神、戸の掖に隠り立たして、天宇受売命、天香山の天之日影を手次に繋けて、天之真拆を鬘と為て、天香山の小竹葉を手草に結ひて、天之石屋戸に汙気伏せて、蹈みとどろこし、神懸為て、胸乳を掛き出で、裳緒を番登に忍垂れき。爾れ高天原動りて、八百万神共に咲ひき。
是に天照大御神、怪しと以為して、天之石屋戸を細めに開きて、内より告りたまえるは、吾が隠り坐すに因りて、天原自ら闇く、亦葦原中国も皆闇けむと以為ふを、何由以、天宇受売は楽し、亦八百万神諸咲楽ぶとのりたまひき。爾ち天宇受売、汝が命に益りて貴き神坐すが故に歓喜咲楽ぶと言しき。
如此言す間に、天児屋命、布刀玉命、其の鏡を指し出でて、天照大御神に示せ奉る時に、天照大御神、逾奇しと思ほして、稍戸より出でて臨み坐す時に、其の隠り立てる天手力男神、其の御手を取りて引き出しまつりき。即ち布刀玉命、尻久米縄を其の御後方に控き度して、此れより以内にな還り入りましそと白言しき。故れ天照大御神出で坐せる時に、高天原も葦原中国も自ら照り明りき。
是に八百万神共に議りて、速須佐之男命に千位置戸を負せ、亦鬚と手足の爪とを切り、祓わしめて、神やらいやらいき。
又、食物を大気津比売神に乞いたまいき。爾に大気津比売、鼻口及尻より種種の味物を取り出でて、種種作り具へ進る時に、速須佐之男命其の態を立ち伺ひて、穢汚きもの奉進ると以為ほして、乃ち其の大気津比売神を殺したまいき。
故れ殺さえたまえる神の身に生れる物は、頭に蚕生り、二つの目に稲種生り、二つの耳に粟生り、鼻に小豆生り、陰に麦生り、尻に大豆生りき。故れ是に神産巣日御祖命、これを取らしめて、種と成したまいき。
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