古事記 上巻2

古事記
  • 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
  • 旧字体・古語は現代語になおします。
  • 神様は「柱」という数え方にします。

イザナギ・イザナミの結婚

必要なものを造り終わると、イザナギが「あなたの身体はどうなっている?」とイザナミに聞きました。

「わたしの体は、段々と出来あがってきたのですが、足りないところ(=女性器のこと)があります。」

「わたしの体は段々と出来あがって、余ったところがある(=男性器のこと)。そこで私の余ったところを、お前の足りない所に挿して塞いで、国を産もうと思うのだが、どうだろうか?」

「それがいいですね。」

「それでは、私とあなたでこのあめ御柱みはしらを互いに反対に回って会って、まぐわいましょう。あなたは右回りに、私は左回りに行きましょう。」

そして、イザナギとイザナミは柱を回りました。出会った瞬間にイザナミが先に「まぁ、なんてイイ男なの!」と言い、その後にイザナギが「あぁ、なんて美しい方なんだろう!」と言いいました。

イザナギは言い終えた後で妻となったイザナミに「女が先に話しかけるなんて不吉だ」と言いましたが、それでも二柱が床で交わって子が生まれました。しかし、生まれた子はヒルコでした。

この子は、葦で作った船に乗せて海に流してしまいました。次に淡島あわしまが生まれましたが、これも子供とは認めませんでした。

そこでイザナギとイザナミは話し合いました。「今、産んだ子供は不吉だった。天津神の所に行って相談しましょう。」と、すぐに高天原に上り、天津神に聞いてみました。

話を聞いた天津神は、太占で占い、「女が先に話しかけたのが良くなかった。もう一回言いなおしなさい」と天津神は言いました。

またおのごろ嶋に降りて、天之御柱の周りを前と同じように回り、今度は天津神の助言通りにイザナギから先に「あぁ、なんときれいな方だろう」と言いました。次にイザナミが「あぁ、なんてすばらしい男性でしょう」と言いました。

順序良く愛の告白をして交わりました。

イザナギ・イザナミ、国を出産する

そうして生まれた子は「淡路島」でした。次に「四国」が生まれました。

四国は、体が一つでもおもては四つあり、おもてごとに名があります。

伊予の国は「エヒメ」といいます。
讃岐の国は「イイヨリヒコ」といいます。
阿波の国は「オオゲツヒメ」といいます。
土佐の国は「タケヨリワケ」といいます。

次に「隠岐」の三つの島を生みました。別名をアメノオシコロワケといいます。

次は「九州」を生みました。この島も体が一つでおもてが四つあり、それぞれに名前があります。

筑紫の国は「シラヒワケ」といいます。
豊の国は「トヨヒワケ」といいます。
肥の国は「タケヒムカヒトヨクジヒネワケ」といいます。
熊曾くまその国は「タケヒワケ」といいます。

次に「壱岐島」を生みました。別名をアメヒトツバシラといいます。

次に「対馬」を生みました。別名をアメノサデヨリヒメといいます。

次に佐渡島を生みました。

次に「本州」を生みました。この名前を「アマツミソラトヨアキツネワケ」といいます。

この八つの島を最初に産んだので、日本を大八島国と呼びます。

次々と八つの島を出産して、国土ができたので帰ろうとしました。しかし、まだお腹の中に残っていた島があったので、最後まで生みきってしまいました。

吉備児嶋きびのこじま(児島半島)を生みました。別名をタケヒカタワケと言います

小豆島しょうどしま生みました。別名をオオヌデヒメと言います。

島(周防大島?)をみました。別名をオオタマルワケと言います。

女島ひめじま(?)を生みました。別名をアメノヒトツネと言います。

知訶嶋ちかのしま(五島列島)を生みました。別名をアメノオシオと言います。

両児嶋ふたごのしま(五島列島の南にある島)を生みました。別名をアメフタヤと言います。

全部で14島を出産しました。

イザナギ・イザナミ、多くの神を生む。

やっと国を産み終えたので、次に神を生むことにしました。

先ずはオオコトオシオノ神(大事忍男神)。

次にイワツチビコノ神(石土毘古神)を生みました。

次にイワスヒメノ神(石巣比売神)を生みました。

次にオオトヒワケノ神(大戸日別神)を生みました。

次にアメノフキオノ神(天之吹男神)を生みました。

次にオオヤビコノ神(大屋毘古神)を生みました。

次にカザモツワケノオシオノ神(風木津別之忍男神)を生みました。

次に海の神のオオワタツミノ神(大綿津見神)を生みました。

次にミナトノ神(水戸神=港の神)であるハヤアキツヒコノ神(速秋津日子神)を生みました。

次にパートナーのハヤアキツヒメノ神(速秋津比売神)を生みました。

このハヤアキツヒコノとハヤアキツヒメの二柱の神が、河と海を分けて神を生みました。

先ずはアワナギノ神(沫那芸神)とアワナミノ神(沫那美神)が産まれました。

次にツラナギノ神(頬那芸神)とツラナミノ神(頬那美神)が産まれました。

次にアメノミクマリノ神(天之水分神)とクノミクマリノ神(国之水分神)が産まれました。

次にアメノクヒザモチノ神(天之久比箸母智神)とクノクヒザモチノ神(国之久比箸母智神)が産まれました。

次の風の神のシナツヒコノ神(志那都比古神)が産まれました。

次に木の神のククノチノ神(久久能智神)が産まれました。

次に山の神のオオヤマヅミノ神(大山津見神)が産まれました。

次に野の神のカヤノヒメノ神(鹿屋野比売神)が産まれました。別名をノヅチノ神(野椎神)といいます。

オオヤマヅミとノヅチは、山と野の神を分担して生みました。

先ずはアメノサヅチノ神(天之狭土神)とクニノサヅチノ神(国之狭土神)を生みました。

次にアメノサギリノ神(天之狭霧神)とクニノサギリノ神(国之狭霧神)を生みました。

次にアメノクラトノ神(天之闇戸神)とクニノクラトノ神(国之闇戸神)を生みました。

次にオオトマトヒコノ神(大戸惑子神)とオオトマトヒメノ神(大戸惑女神)を生みました。

次にトリノイハクスフネノ神(鳥之石楠船神)、別名をアメノトリフネ(天鳥船)といいます。

次にオオゲツヒメ神(大宜都比売神)を生みました。

イザナミ、火の神を出産することにより黄泉の国へ

次にヒノヤギハヤオノ神(火之夜芸速男神)を生みました。別名をヒノカガビコノ神(火之炫毘古神)、別名をヒノカグツチノ神(火之迦 具土神)といいます。

この子供(カグツチ神のこと)を産んだことで、イザナミは女陰(女性器)を焼けどして倒れてしまいました。

その苦しみから嘔吐して生まれたのが
カナヤマヒコノ神(金山毘古神)とカナヤマヒメノ神(金山毘売神)。

次に苦しみから脱糞し、糞から生まれたのが
ハニヤスヒコノ神(波邇夜須毘古神)とハニヤスヒメノ神(波邇夜須毘売神)。

次に苦しみから失禁し、尿から生まれたのが
ミズハノメノ神(弥都波能売神)とワクムスビノ神(和久産巣日神)。

和久産巣日神の子供はトヨウケビメノ神(富宇気毘売神)です。

そしてイザナミは火の神を産んだことで黄泉国(死者の国)へといってしまいました。

イザナギとイザナミが産んだ島は14島、神は35柱となりました。

(オノコロ島は生んだことにしません。ヒルコと淡島は子の数に入れません。)

ここまでの原文

しま天降あもして、天之御柱あめのみはしら見立みたて、八尋殿やひろどの見立みたてたまひき。

ここに、いも伊邪那美命いざなみのみことに、如何いかれるといたまへば、て、わざるところ一処ひとところりと答白もおしたまいき。

すなわ伊邪那岐命いざばぎのみことりたまひつらく、ははて、あまれるところ一処ひとところり。

あまれるところを、はざるところふさぎて、国土くにさむと以為おもうは奈何いかにとのりたまえば、伊邪那美命いざなみのみことしかけむ。と答曰もおしたまいき。

ここ伊邪那岐命いざなぎのみことしからば天之御柱あめのみはしらめぐいて、美斗能麻具波比みとのまぐはいせな。とりたまひき。

如此かくちぎりて、すなわみぎりよりめぐえ、ひだりよりめぐわんとりたまひ、ちぎおえめぐときに、伊邪那美命いざなみのみことづ、あなにやし、えおとこを、とりたまい、のち伊邪那岐命いざなぎのみこと、あなにやし、えおとめを、とりたまいき。

おのもおのもりたまいおえのちいも女人おみな言先ことさきだちてふさわず、りたまいき。

しかれども、久美度くみどおこして、みこ水蛭子ひるこみたまいき。

みこ葦船あしぶねれてながりたまいき。

つぎ淡嶋あわしまみき。みこかずにはらず。

ここ二柱ふたはしらかみ議云はかりたまいつらく、いまめしみこふさわず。なお天神あまつかみ御所みもともおすべしとのりたまいて、すなわとも参上まいのぼりて、天神あまつかみみこといたまいき。

ここ天神あまつかみ命以みこともちて、布斗麻邇ふとまに卜相うらえりたまいつらく、おみな言先ことさきだちしにりてふさわず。亦還またかえくだりてあらたえとのりたまひき。

すなわかえくだりまして、さら天之御柱あめのみはらさきごとめぐりたまいき。

ここ伊邪那岐命いざなぎのみことづ、あなにやし、えおとめを、とりたまい、のちいも伊邪那美命いざなみのみこと、あなにやし、えおとこを、とりたまいき。

如此かくりたまいおえ御合みあいまして、みこ淡道之穂之狭別嶋あわぢのほのさわけのしまみたまいき。

つぎ伊予之二名嶋いよのふたなのしまみたまいき。このしまは、ひとつにして、おもり。面毎おもごとり。

伊予国いよのくに愛比売えひめい、讃岐国さぬきのくに飯依比古いいよりひこい、粟国あわのくに大宜都比売おおげつひめい、土佐国とさのくに建依別たけよりわけう。

つぎ隠伎之三子嶋おきのみつごのしまみたまいき。亦名またのま天之忍許呂別あめのおしころわけ

つぎ筑紫嶋つくしのしまみたまいき。しまも、おもり。面毎おもごとり。

れ、筑紫国つくしのくに白日別しらひわけい、豊国とよのくに豊日別とよひわけい、肥国ひのくに建日向日豊久士比泥別たけひむかひとよくじひねわけい、熊曽国くまそのくに建日別たけひわけう。

つぎ伊伎嶋いきのしまみたまいき。亦名またのな天比登都柱あめのひとつばしらう。

つぎ津嶋つしまみき。亦名またのな天之狭手依比売あめのさでよりひめう。

つぎ佐渡嶋さどのしまみき。

つぎ大倭豊秋津島おおやまととよあきつしまみき。亦名またのな天御虚空豊秋津根別あまつみそらとよあきつねわけう。

八嶋やしまみませるくになるにりて、大八嶋国おおやしまぐにう。

のちかえししときに、吉備児嶋きびのこじまみたまいき。亦名またのな建日方別たけひかたわけう。

つぎ小豆嶋あづきしまみたまいき。亦名またのな大野手比売おおぬでひめう。

つぎ大嶋おおしまみたまいき。亦名またのな大多麻流別おおたまるわけう。

つぎ女嶋ひめじまみたまいき。亦名またのな天一根あめのひとつねう。

つぎ知訶嶋ちかのしまみたまいき。亦名またのな天之忍男あめのおしおう。

つぎ両児嶋ふたごのしまみたまいき。亦名またのな天両屋あめふたやう。

すでくにえて、さらかみみましき。みませるかみみなは、大事忍男神おおことおしおのかみつぎ石土毘古神いわつちびこのかみみまし、つぎ石巣比売神いわすひめみまし、つぎ大戸日別神おおとひわけのかみみまし、つぎ天之吹男神あめのふきおのかみみまし、つぎ大屋毘古神おおやびこのかみみまし、つぎ風木津別之忍男神かざけつわけのおしおのかみみまし、つぎ海神わたのかみみな大綿津見神おおわたつみのかみみまし、つぎ水戸神みなとのかみみな速秋津日子神はやあきつひこのかみつぎいも速秋津比売神はやあきつひめのかみをみましき。【大事忍男神おおことおしおのかみより速秋津比売神はやあきつひめのかみまで、あわせて十神とはしら

速秋津日子神はやあきつひこのかみ速秋津比売神はやあきつひめかみ二柱ふたはしらかみ河海かわうみりて、けてみませるかみみなは、沫那芸神あわなぎのかみつぎ沫那美神あわなみのかみつぎ頬那芸神つらなぎのかみつぎ頬那美神つらなみのかみつぎ天之水分神あめのみくまりのかみつぎ国之水分くにのみくまりのかみ神、つぎ天之久比箸母智神あめのくいざもちのかみつぎ国之久比箸母智神くにのくいざもちのかみ。【沫那芸神あわなぎのかみより国之久比箸母智神くにのくいざもちのかみまで、あわせて八神やはしら

つぎかぜかみみな志那都比古神しなつひこのかみみまし、つぎかみみな久久能智神くくのちのかみみまし、つぎやまかみみな大山津見神おおやまつみのかみみまし、つぎかみみな鹿屋野比売神かやぬひめのかみみましき。またのみな野椎神のづちのかみもうす。【志那都比古神しなつひこのかみより野椎神のづちのかみまであわせて四神よはしら

此の大山津見神おおやまつみのかみ野椎神のづちのかみふたはしらのかみ山野やまぬりて、けてみませるかみみなは、天之狭土神あめのさづちのかみつぎ国之狭土神くにのさづちのかみつぎ天之狭霧神あまのさぎりのかみつぎ国之狭霧神くにのさぎりのかみつぎ天之闇戸神あめのくらどのかみつぎ国之闇戸神くにのくらどのかみつぎ大戸惑子神おおとまどいこのかみつぎ大戸惑女神おおとまどいめのかみ。【天之狭土神あめのさづちのかみより大戸惑女神おおとまどいめのかみまで、あわせて八神やはしら

つぎみませるかみみなは、鳥之石楠船神とりのいわすくふねのかみまたのみな天鳥船あめのとりふねもうす。つぎに 大宜都比売神おおげつひめのかみみまし、つぎ火之夜芸速男神ひのやぎはやおのかみみましき。またのみな火之炫毘古神ひのかがびこのかみもうし、またのみな火之迦 具土神ひのかぐつちのかみもうす。

みこみますにりて、美蕃登みほとかえてこやせり。多具理たぐりりませるかみみな金山毘古神かなやまびこのかみつぎ金山毘売神かなやまびめのかみつぎくそりませるかみみな波邇夜須毘古神はにやすびこのかみつぎ波邇夜須毘売神はにやすびめのかみつぎ尿ゆまりりませるかみみな弥都波能売神みつはめのかみつぎ和久産巣日神わくむすびのかみかみみこ富宇気毘売神とようけびめのかみもうす。伊邪那美神いざなみのかみは、かみみませるにりて、つい神避かむさしぬ。【天鳥船あめのとりふねより富宇気毘売神とようけびめのかみまで、あわせて八神やはしら

すべ伊邪那岐神いざなぎのかみ伊邪那美神いざなみのかみ二柱ふたはしらかみともみませるしま壱拾肆嶋とおあまりよしまかみ参拾伍神みそぢあまりいつはしら。【は、いま神避かむさりまさざりし以前さきみませり。ただ意能碁呂嶋おのころじまのみは、みませるならず。また水蛭子ひるこ淡嶋あわしまとも、みこかずらず。】

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