- 読みやすいように神様の御名はカタカナで表記します。
- 旧字体・古語は現代語になおします。
- 神様は「柱」という数え方にします。
イザナギ・イザナミの結婚
必要なものを造り終わると、イザナギが「あなたの身体はどうなっている?」とイザナミに聞きました。
「わたしの体は、段々と出来あがってきたのですが、足りないところ(=女性器のこと)があります。」
「わたしの体は段々と出来あがって、余ったところがある(=男性器のこと)。そこで私の余ったところを、お前の足りない所に挿して塞いで、国を産もうと思うのだが、どうだろうか?」
「それがいいですね。」
「それでは、私とあなたでこの天之御柱を互いに反対に回って会って、まぐわいましょう。あなたは右回りに、私は左回りに行きましょう。」
そして、イザナギとイザナミは柱を回りました。出会った瞬間にイザナミが先に「まぁ、なんてイイ男なの!」と言い、その後にイザナギが「あぁ、なんて美しい方なんだろう!」と言いいました。
イザナギは言い終えた後で妻となったイザナミに「女が先に話しかけるなんて不吉だ」と言いましたが、それでも二柱が床で交わって子が生まれました。しかし、生まれた子はヒルコでした。
この子は、葦で作った船に乗せて海に流してしまいました。次に淡島が生まれましたが、これも子供とは認めませんでした。
そこでイザナギとイザナミは話し合いました。「今、産んだ子供は不吉だった。天津神の所に行って相談しましょう。」と、すぐに高天原に上り、天津神に聞いてみました。
話を聞いた天津神は、太占で占い、「女が先に話しかけたのが良くなかった。もう一回言いなおしなさい」と天津神は言いました。
またおのごろ嶋に降りて、天之御柱の周りを前と同じように回り、今度は天津神の助言通りにイザナギから先に「あぁ、なんときれいな方だろう」と言いました。次にイザナミが「あぁ、なんてすばらしい男性でしょう」と言いました。
順序良く愛の告白をして交わりました。
イザナギ・イザナミ、国を出産する
そうして生まれた子は「淡路島」でした。次に「四国」が生まれました。
四国は、体が一つでも面は四つあり、面ごとに名があります。
伊予の国は「エヒメ」といいます。
讃岐の国は「イイヨリヒコ」といいます。
阿波の国は「オオゲツヒメ」といいます。
土佐の国は「タケヨリワケ」といいます。
次に「隠岐」の三つの島を生みました。別名をアメノオシコロワケといいます。
次は「九州」を生みました。この島も体が一つで面が四つあり、それぞれに名前があります。
筑紫の国は「シラヒワケ」といいます。
豊の国は「トヨヒワケ」といいます。
肥の国は「タケヒムカヒトヨクジヒネワケ」といいます。
熊曾の国は「タケヒワケ」といいます。
次に「壱岐島」を生みました。別名をアメヒトツバシラといいます。
次に「対馬」を生みました。別名をアメノサデヨリヒメといいます。
次に佐渡島を生みました。
次に「本州」を生みました。この名前を「アマツミソラトヨアキツネワケ」といいます。
この八つの島を最初に産んだので、日本を大八島国と呼びます。
次々と八つの島を出産して、国土ができたので帰ろうとしました。しかし、まだお腹の中に残っていた島があったので、最後まで生みきってしまいました。
吉備児嶋(児島半島)を生みました。別名をタケヒカタワケと。
次に小豆島を生みました。別名をオオヌデヒメと言います。
次に大島(周防大島?)を生。別名をオオタマルワケと言います。
次に女島(?)を生みました。別名をアメノヒトツネと言います。
次に知訶嶋(五島列島)を生みました。別名をアメノオシオと言います。
次に両児嶋(五島列島の南にある島)を生みました。別名をアメフタヤと言います。
全部で14島を出産しました。
イザナギ・イザナミ、多くの神を生む。
やっと国を産み終えたので、次に神を生むことにしました。
先ずはオオコトオシオノ神(大事忍男神)。
次にイワツチビコノ神(石土毘古神)を生みました。
次にイワスヒメノ神(石巣比売神)を生みました。
次にオオトヒワケノ神(大戸日別神)を生みました。
次にアメノフキオノ神(天之吹男神)を生みました。
次にオオヤビコノ神(大屋毘古神)を生みました。
次にカザモツワケノオシオノ神(風木津別之忍男神)を生みました。
次に海の神のオオワタツミノ神(大綿津見神)を生みました。
次にミナトノ神(水戸神=港の神)であるハヤアキツヒコノ神(速秋津日子神)を生みました。
次にパートナーのハヤアキツヒメノ神(速秋津比売神)を生みました。
このハヤアキツヒコノとハヤアキツヒメの二柱の神が、河と海を分けて神を生みました。
先ずはアワナギノ神(沫那芸神)とアワナミノ神(沫那美神)が産まれました。
次にツラナギノ神(頬那芸神)とツラナミノ神(頬那美神)が産まれました。
次にアメノミクマリノ神(天之水分神)とクノミクマリノ神(国之水分神)が産まれました。
次にアメノクヒザモチノ神(天之久比箸母智神)とクノクヒザモチノ神(国之久比箸母智神)が産まれました。
次の風の神のシナツヒコノ神(志那都比古神)が産まれました。
次に木の神のククノチノ神(久久能智神)が産まれました。
次に山の神のオオヤマヅミノ神(大山津見神)が産まれました。
次に野の神のカヤノヒメノ神(鹿屋野比売神)が産まれました。別名をノヅチノ神(野椎神)といいます。
オオヤマヅミとノヅチは、山と野の神を分担して生みました。
先ずはアメノサヅチノ神(天之狭土神)とクニノサヅチノ神(国之狭土神)を生みました。
次にアメノサギリノ神(天之狭霧神)とクニノサギリノ神(国之狭霧神)を生みました。
次にアメノクラトノ神(天之闇戸神)とクニノクラトノ神(国之闇戸神)を生みました。
次にオオトマトヒコノ神(大戸惑子神)とオオトマトヒメノ神(大戸惑女神)を生みました。
次にトリノイハクスフネノ神(鳥之石楠船神)、別名をアメノトリフネ(天鳥船)といいます。
次にオオゲツヒメ神(大宜都比売神)を生みました。
イザナミ、火の神を出産することにより黄泉の国へ
次にヒノヤギハヤオノ神(火之夜芸速男神)を生みました。別名をヒノカガビコノ神(火之炫毘古神)、別名をヒノカグツチノ神(火之迦 具土神)といいます。
この子供(カグツチ神のこと)を産んだことで、イザナミは女陰(女性器)を焼けどして倒れてしまいました。
その苦しみから嘔吐して生まれたのが
カナヤマヒコノ神(金山毘古神)とカナヤマヒメノ神(金山毘売神)。
次に苦しみから脱糞し、糞から生まれたのが
ハニヤスヒコノ神(波邇夜須毘古神)とハニヤスヒメノ神(波邇夜須毘売神)。
次に苦しみから失禁し、尿から生まれたのが
ミズハノメノ神(弥都波能売神)とワクムスビノ神(和久産巣日神)。
和久産巣日神の子供はトヨウケビメノ神(富宇気毘売神)です。
そしてイザナミは火の神を産んだことで黄泉国(死者の国)へといってしまいました。
イザナギとイザナミが産んだ島は14島、神は35柱となりました。
(オノコロ島は生んだことにしません。ヒルコと淡島は子の数に入れません。)
ここまでの原文
其の嶋に天降り坐して、天之御柱を見立て、八尋殿を見立てたまひき。
是に、其の妹伊邪那美命に、汝が身は如何に成れると問いたまへば、吾が身は成り成て、成り合わざる処一処在りと答白したまいき。
爾ち伊邪那岐命詔りたまひつらく、我が身はは成り成て、成り余れる処一処在り。
故れ此の吾が身の成り余れる処を、汝が身の成り合はざる処に刺し塞ぎて、国土生み成さむと以為うは奈何にとのりたまえば、伊邪那美命、然善けむ。と答曰したまいき。
爾に伊邪那岐命、然らば吾と汝と是の天之御柱を行き廻り逢いて、美斗能麻具波比せな。と詔りたまひき。
如此云い期りて、乃ち汝は右より廻り逢え、我は左より廻り逢わんと詔りたまひ、約り竟て廻る時に、伊邪那美命、先づ、あなにやし、えおとこを、と言りたまい、後に伊邪那岐命、あなにやし、えおとめを、と言りたまいき。
各言りたまい竟し後、其の妹に女人を言先だちて良わず、告りたまいき。
然れども、久美度に興して、子水蛭子を生みたまいき。
此の子は葦船に入れて流し去りたまいき。
次に淡嶋を生みき。是も子の例には入らず。
是に二柱の神、議云りたまいつらく、今吾が生めし子良わず。猶天神の御所に白すべしとのりたまいて、即ち共に参上りて、天神の命を請いたまいき。
爾に天神の命以て、布斗麻邇に卜相て詔りたまいつらく、女を言先だちしに因りて良わず。亦還り降りて改め言えとのりたまひき。
故れ爾ち反り降りまして、更に其の天之御柱を先の如往き廻りたまいき。
是に伊邪那岐命、先づ、あなにやし、えおとめを、と言りたまい、後に妹伊邪那美命、あなにやし、えおとこを、と言りたまいき。
如此言りたまい竟て御合いまして、子淡道之穂之狭別嶋を生みたまいき。
次に伊予之二名嶋を生みたまいき。此の嶋は、身一つにして、面四つ有り。面毎に名有り。
故れ伊予国を愛比売と謂い、讃岐国を飯依比古と謂い、粟国は大宜都比売と謂い、土佐国を建依別と謂う。
次に隠伎之三子嶋を生みたまいき。亦名は天之忍許呂別。
次に筑紫嶋を生みたまいき。此の嶋も、面四つ有り。面毎に名有り。
故れ、筑紫国は白日別と謂い、豊国は豊日別と謂い、肥国は建日向日豊久士比泥別と謂い、熊曽国は建日別と謂う。
次に伊伎嶋を生みたまいき。亦名は天比登都柱と謂う。
次に津嶋を生みき。亦名を天之狭手依比売と謂う。
次に佐渡嶋を生みき。
次に大倭豊秋津島を生みき。亦名は天御虚空豊秋津根別と謂う。
故れ此の八嶋を先づ生みませる国なるに因りて、大八嶋国と謂う。
然て後に還り坐しし時に、吉備児嶋を生みたまいき。亦名は建日方別と謂う。
次に小豆嶋を生みたまいき。亦名は大野手比売と謂う。
次に大嶋を生みたまいき。亦名は大多麻流別と謂う。
次に女嶋を生みたまいき。亦名は天一根と謂う。
次に知訶嶋を生みたまいき。亦名は天之忍男と謂う。
次に両児嶋を生みたまいき。亦名は天両屋と謂う。
既に国を生み竟えて、更に神を生みましき。故れ生みませる神の名は、大事忍男神、次に石土毘古神を生みまし、次に石巣比売神を生みまし、次に大戸日別神を生みまし、次に天之吹男神を生みまし、次に大屋毘古神を生みまし、次に風木津別之忍男神を生みまし、次に海神、名は大綿津見神を生みまし、次に水戸神、名は速秋津日子神、次に妹速秋津比売神のかみを生みましき。【大事忍男神より速秋津比売神まで、併せて十神】
此の速秋津日子神、速秋津比売神の二柱の神、河海に因りて、持ち別けて生みませる神の名は、沫那芸神、次に沫那美神、次に頬那芸神、次に頬那美神、次に天之水分神、次に国之水分神、次に天之久比箸母智神、次に国之久比箸母智神。【沫那芸神より国之久比箸母智神まで、併せて八神】
次に風の神、名は志那都比古神を生みまし、次に木の神、名は久久能智神を生みまし、次に山の神、名は大山津見神を生みまし、次に野の神、名は鹿屋野比売神を生みましき。亦名は野椎神と謂す。【志那都比古神より野椎神まで併せて四神】
此の大山津見神、野椎神の二神、山野に因りて、持ち別けて生みませる神の名は、天之狭土神、次に国之狭土神、次に天之狭霧神、次に国之狭霧神、次に天之闇戸神、次に国之闇戸神、次に大戸惑子神、次に大戸惑女神。【天之狭土神より大戸惑女神まで、併せて八神】
次に生みませる神の名は、鳥之石楠船神、亦名は天鳥船と謂す。次に 大宜都比売神を生みまし、次に火之夜芸速男神を生みましき。亦名は火之炫毘古神と謂し、亦名は火之迦 具土神と謂す。
此の子を生みますに因りて、美蕃登炙かえて病み臥せり。多具理に生りませる神の名は金山毘古神、次に金山毘売神、次に屎に成りませる神の名は波邇夜須毘古神、 次に波邇夜須毘売神。次に尿に成りませる神の名は弥都波能売神、次に和久産巣日神。此の神の子を富宇気毘売神と謂す。故れ伊邪那美神は、火の神を生みませるに因りて、遂に神避り坐しぬ。【天鳥船より富宇気毘売神まで、併せて八神】
凡て伊邪那岐神・伊邪那美神二柱の神、共に生みませる嶋、壱拾肆嶋、神、参拾伍神。【是は、未だ神避りまさざりし以前に生みませり。唯意能碁呂嶋のみは、生みませるならず。亦水蛭子と淡嶋とも、子の例に入らず。】
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