古事記 序文(中編)
飛鳥清原大宮にいらっしゃいました天武天皇の御代のこと。
天武天皇は、大海人皇子の頃より優れた徳を備えられた方で、龍が伏する如く過ごしていましたが、ついに雷鳴を轟かし目覚める時を迎えました。
それは、ある日こと。夢の中で歌を聞きました。この歌は皇位を継ぐお告げだと思われて、その夜に川で禊を行ったところ、皇位継承の使命を確信しました。しかし、まだ皇位を継ぐ時期ではないと考え、自ら出家して南方の吉野山にいらっしゃました。しかし、天智天皇が崩御されると蝉が脱皮するかの如く天子になられました。よく人々が集まり兵の準備が整ったので、東国(岐阜県不破郡一帯のこと)へ虎のような威を以て進軍しました。